watashitachi no kurai mirai

私たちの暗い未来

_rakugaki

ai

3ヶ月に一遍程度の頻度で電話をする子がいて、作家の話や近況等を話したりするのだけれど、ともすれば変わりたいというような願いばかりを語ったりする子で、愛や神様やフラットな自分というものに言いようのない信仰を持っており、何もかもを引き受けながら…

mudai

電車で二時間かかる地方へ行くことになって、前日にはどうしてこんなにも遠くまでいかなくてはいけないのかなんてざわざわとした心持ちを同僚と笑い飛ばしたりなんかしている中で、彼が「誘致に失敗した感じの街だよ」と言うので、なんですかそれと重ねて笑…

水玉

母のお墓参りで片田舎の実家へ帰ると、行く人々の連れる子どもたちが皆揃って小さな浴衣をまとって歩道を駆けていて、その隣をゆっくりと車で追い抜きながら、町内会のお祭りでもあるのかななんてことを思う。 「通り沿いの小学校とかでやるのかもね」 と後…

mudai

普通の会社より一月遅いボーナスの査定結果通知があって、思うところもないのでへぇはぁと彼等の話を聞いている中で、「これは内事だけれど……」と上司同士で目配せをして前置くと、会社で厄介者扱いされていた人がとうとう辞めるのだと続けたのだった。限り…

mudai

お風呂の中で本を読むのが好きだと言ったら、怪訝な顔をされた。 「紙がさ、へにゃっとならない?」 湯気でふやけた紙のくたくたとした様子や、一通り身体を洗い終えたあと、もう一度手に取った時に既読と未読の境目が混じり合ってしまって混沌としてくるの…